「障がい者施設って、どんなイメージをお持ちですか?」
私がこの質問を周りの友人にしてみると、多くの人が「支援や介護を受ける場所」「静かで落ち着いた雰囲気」といった印象を持っているようです。
実は私も以前はそう考えていました。
例えば、東京都で精神障がい者支援を行う「あん福祉会の取り組み」について調べてみると、従来の福祉施設の概念を大きく覆すような革新的な支援活動が行われていることが分かります。
でも、実際に足を運んでみると、その印象は大きく覆されることになったんです。
施設の中では、利用者さんたちが主体的に活動を選び、自分の意見を発信し、時には施設の運営にも関わっているーーそんな生き生きとした姿が見られました。
今回は、私が取材を通じて出会った「新しい障がい者施設のカタチ」について、コミュニティデザインを学んだ経験も交えながらお伝えしていきたいと思います。
取材で見えた障がい者施設のリアル
現場を訪れて感じた雰囲気と利用者の姿
最初に訪れたのは、大阪市内にある就労支援施設「ワークスペースみらい」です。
玄関を開けた瞬間、私の予想は見事に裏切られました。
施設内には、明るい笑い声が響いています。
壁には利用者さんたちが制作したアート作品が飾られ、それぞれのテーブルでは、思い思いの作業に没頭する姿が。
ある方は手作りの雑貨を丁寧に仕上げながら、隣の仲間と世間話に花を咲かせています。
また別の方は、施設のSNSアカウント用の写真撮影に熱心に取り組んでいました。
印象的だったのは、誰かに指示されて動くのではなく、自分のペースで作業を選んでいる様子でした。
「私たちの役割は、利用者さんの”やってみたい”という気持ちを支えることなんです」
施設長の田中さん(仮名)は、そう教えてくれました。
スタッフの役割とコミュニケーションの工夫
施設のスタッフたちは、実に興味深い工夫を凝らしていました。
例えば、朝のミーティングでは、スタッフが一方的に指示を出すのではなく、「今日はどんなことをしたい?」と、必ず利用者さんの意見を聞くところから始まります。
選択肢を提示する際も、「AとBどちらがいい?」という二択ではなく、「他にやってみたいことはある?」と、自由な発想を促す質問を心がけているとのこと。
そして特に印象的だったのが、「みらいプロジェクト」と呼ばれる取り組みです。
これは、利用者さんが自分たちでチームを組み、施設の新しい活動を企画するというもの。
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│企画の発案 │
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│チーム結成 │
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│計画の具体化 │
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↓
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│実施・振り返り│
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最近では、施設で作る商品のパッケージデザインを一新したり、近隣の公園で写真展を開催したりと、次々と新しいアイデアが実現しています。
💡 ポイント:スタッフの関わり方
スタッフは「指示する人」ではなく、「可能性を広げるパートナー」としての立ち位置を大切にしています。失敗を恐れずチャレンジできる環境づくりが、利用者さんの自主性を育む土台となっているのです。
自主性を育む仕掛けとは
コミュニティデザインの視点で見る施設運営
私は大学時代、コミュニティデザインを専攻していました。
そこで学んだのは、「人々が自然と交流したくなる場をどうやって作るか」という考え方です。
実は、この考え方が障がい者施設の運営にも活かされているんです。
「ワークスペースみらい」では、施設内の空間づくりにも工夫が凝らされています。
【施設内レイアウト】
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│ キッチン │
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│ 作業 │ 交流 │
│ スペース│ スペース│
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│
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│ 展示コーナー│
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作業スペースと交流スペースが程よい距離感で配置され、自然と会話が生まれやすい環境になっています。
また、月に一度開催される「みらいカフェ」では、利用者さんが企画から運営まで携わり、地域の方々との交流の場を作っています。
「実はこのカフェ、私たち職員は裏方に徹しているんです」と、田中さんは笑顔で教えてくれました。
メニューの考案、接客、会計まで、すべて利用者さんたちが担当。
時には失敗することもありますが、それも含めて貴重な経験になっているそうです。
SNSやビジュアル活用によるモチベーションアップ
現代のコミュニケーションには、SNSが欠かせません。
「ワークスペースみらい」でも、InstagramとTwitterを活用した情報発信を積極的に行っています。
特に印象的だったのが、利用者さんが撮影した写真に「#みらいの日常」というハッシュタグをつけて投稿する取り組み。
投稿内容 | 反響 | 効果 |
---|---|---|
作品制作過程 | いいね数平均50件 | 達成感の向上 |
イベント風景 | リポスト多数 | 地域との繋がり強化 |
日常の一コマ | コメント活発 | 仲間との絆深化 |
「自分が撮った写真に”いいね”がつくと、みんなすごく嬉しそうなんです」
SNS担当のスタッフ、佐藤さん(仮名)はそう話します。
さらに、施設内の掲示板には、投稿された写真とコメントが印刷して貼られています。
デジタルとアナログ、両方のコミュニケーションを組み合わせることで、より多くの利用者さんが参加できる工夫がなされているんですね。
⭐ 取材後のひとこと
取材を通じて、「自主性を育む」というのは、決して大げさな仕掛けや特別なプログラムを必要とするわけではないことに気づきました。
日々の小さな選択肢、ちょっとした成功体験、そして何より「あなたの意見を聞かせてください」という姿勢。
それらの積み重ねが、確実に利用者さんたちの自信になっているんです。
社会との連携と波及効果
地域社会を巻き込むためのイベントやコラボ企画
「ワークスペースみらい」の取り組みは、施設の中だけにとどまりません。
地域社会との連携によって、さらに大きな可能性が広がっているのです。
特に印象的だったのは、地元の大学生と協力して実施された「みらいマルシェ」というイベント。
利用者さんたちが制作した雑貨や菓子の販売に加えて、パラスポーツの体験コーナーも設置されました。
「最初は緊張していた利用者さんも、お客さんとの会話を重ねるうちに自然と笑顔になっていきました」
イベントを共同企画した同志社大学の学生、山田さん(仮名)は、そう振り返ります。
このイベントをきっかけに、新たな展開も生まれています。
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▼ 連携の広がり ▼
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【大学生との協働】
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【地元企業との商品開発】
↓
【パラスポーツ団体との交流】
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【地域イベントへの定期出店】
特筆すべきは、障がい者スポーツとの連携です。
地元のパラ陸上チームの選手が定期的に施設を訪れ、利用者さんとトレーニングを行う機会も設けられています。
「スポーツを通じて、できることが増えていく実感が持てるんです」
そう話すのは、週に一度パラ陸上に挑戦している利用者の木村さん(仮名)。
彼の言葉には、スポーツがもたらす自信と可能性が感じられました。
読者ができる支援と参加のカタチ
さて、ここまで「ワークスペースみらい」の取り組みをご紹介してきましたが、読者のみなさんにもぜひ参加してほしい活動があります。
実は、施設では月に一度「オープンデイ」を開催しているんです。
これは、地域の方々が気軽に施設を見学できる日。
事前予約は不要で、利用者さんとの交流もできます。
「まずは知ることから始められる」というのが、私からのご提案です。
施設のSNSをフォローするところから始めてみるのも良いかもしれません。
投稿をシェアしたり、コメントを残したりするだけでも、利用者さんの励みになります。
まとめ
今回の取材を通じて、私は「障がい者施設」というものの新しい可能性を見出すことができました。
それは、単なる「支援の場」ではなく、一人ひとりの可能性が花開く「クリエイティブな活動拠点」としての姿です。
最も印象的だったのは、利用者さんたちの生き生きとした表情。
自分の意見が尊重され、やりたいことに挑戦できる環境があれば、誰もが輝けるーーそんな当たり前のことを、改めて教えてもらった気がします。
施設の取り組みを取材する中で、私自身も多くの学びがありました。
特に、コミュニティデザインの考え方が、障がいのある方々の自主性を育む上で重要な役割を果たしていることを実感できました。
最後に、読者のみなさんへのメッセージです。
障がい者施設は、決して遠い存在ではありません。
私たちの地域社会の中で、たくさんの可能性を秘めた人々が活動しています。
その活動を知り、できることから参加してみる。
それが、より豊かな共生社会への第一歩になるのではないでしょうか。
ぜひ、あなたも「みらいの日常」を覗いてみませんか?